2015年3月15日日曜日

Review 劇評: TEN






元長浜北高演劇部員による劇団プラネット・カンパニーの新作公演 『 TEN 』 を観た。


2015年3月14日


於 米原文化産業会館 小劇場


『 TEN 』


脚本 北澤あさこ


劇団プラネット・カンパニー


旬の役者のきびきびした演技を見るのは心地よいものだ。


心からそう実感した舞台だった。


役者のポテンシャルを演出が巧みに引き出している。和服の演出、着物の特徴である「重ね着」を上手く使って、一人数役を演じ分けている。時に目まぐるしい程に役が入れ替わるが違和感を感じさせないのは役者の力量とセットの障子を活かした場面と役の転換が効いているからだろう。このあたり、心憎いばかりである。


北澤のシナリオもよく練れている。かなりの人数が登場する群像劇でありながら、各キャラクターの個性をさらりと描き分けている。こなれたセリフ回しと掛け合い、たっぷり「くすぐり」も効かせつつ、自然に笑いを誘う。役者たちは、登場人物が心の底に抱え込む奥深い感情までも引き出すことに成功していたように思う。脚本・演技ともに出色の出来であった。


複雑な幕末の政治状況を織り込みつつドラマは進行し、時計の音がスリリングに響く中、クライマックスが待ち受けている。起・承のくすぐりと笑いが、転・結した後のカタルシスへの布石なのは定石通りだが、奇をてらう必要などあろうはずもない。


なぜなら、これは紛れもないプロの芝居だから。


10年目の劇団プラネット・カンパニーの団員が仕上げたのは、正当な上質のエンターティンメントであった。話術に聴き惚れ、演技に魅せられ、舞台に引き込まれているうち、どうやら、私自身の心の奥底の感情が適度に撹拌されたらしい。楽しく見ごたえのある芝居を観た後に飲む酒はまことにおいしいものであった。


最後に残念な点を挙げれば、ただ一つ。公演が2回きりであること。せめて、もう1週やっても良かったのではないか。次回公演が待ち遠しい。







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