2015 春夏シーズン 『 たそがれ時の教室/Twilight In a Classroom 』

「わかってないわね、あたしの言いたいことが」ミス・スタインは言った。
「...壁に掛けられない Inaccrochable (イナクロシアブル) ようなものは、最初から描いてはいけないの。まったく無意味なことだから。それは間違っているし、愚かしいことなのよ。」(E・ヘミングウェイ『移動祝祭日』より from Ernest Hemingway's 'A Moveable Feast')
今、文字通り、ここに絵が掛けられている。
それは、確かにここに掛けるに値する作品だからだ。
放課後のひと時、人気のない教室、淡い光の中、静かに時間が流れている...
一見して、誰もいない教室だが、じっくり見れば、空虚ではないことに気付く。
誰かが描かれているわけではないが、誰かの息遣いをも感じさせる。
カンバスに再現されているのは、静まり返った放課後の教室だけではない。
昼間の授業、休み時間の行き交い、下校時の賑わい...
夕闇迫る教室の中、過ぎ去った「時」のエコー(残響)が響く。
優れた絵画は、時に描かれざるものをも垣間見せてくれる。
この絵は、そうした絵の一枚だ。
ストイックなまでに抑制された色遣い、
全体にバランスのとれた筆使い、
揺るぎのない視点と確かな美意識。
それらが絶妙にブレンドされて、
ある雰囲気(---ノスタルジーとそれに加えて後何か---)を見事に表現しているこの絵。
それは、まさに「壁に掛けられる絵」なのだ。
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